退役軍人病院の整形外科医だったロバート・ベッカー(Robert O. Becker)は、
メスよりマイクロアンペアの直流電流を好んで扱ったことから同僚に「Electric Doctor(電気の医者)」と呼ばれました。

サラマンダーが脚を再生するときに流れる“損傷電流”を自作プローブで測定し、
「電気こそ治癒スイッチ」という逆転の発想を得たベッカーは、
その仮説を臨床に持ち込み、通常では治らない骨折、感染創、重度熱傷などで成果を挙げます。
さらに1985年刊行の一般向け書籍『The Body Electric』にて、生体電気・再生医療・電磁汚染を体系的に紹介しました。
今回の記事では、『The Body Electric』の内容を少しご紹介します。

ベッカー流「マイクロカレント療法」
ベッカーが行っていた「マイクロカレント療法」のポイントは、
Minus for Growth(‐極は再生)/ Plus for Infection(+極は殺菌)。
ケガをした場所に流れる生体電流を「ほんの少し増幅」させるだけで、
- -極(マイナス電極)
細胞に“再生スイッチ”を入れて いったん幹細胞に近い《未分化状態》へリセット。
そこから骨や皮膚など必要な組織へ改めて作り直す信号を送る。 - +極(プラス電極・銀)
微弱電流で 銀イオンがじわっと溶け出し、強い抗菌・抗炎症バリアを形成。
傷口を無菌に保ちながら治りやすい環境を整える。
というシンプルな仕組みです。
なぜ電気で治るのか
- 体に備わった“修復電流”
骨や皮膚が傷つくと、その場所には自然に数マイクロアンペア(100万分の1アンペア)の直流が流れ始めます。
これは「ここを直せ」という体内の通電信号で、治癒が止まると電流も消えます。
ベッカーは、この信号を外から同じ向き・同じくらいの強さで“増幅”すれば、元の自己修復プログラムが再起動すると考えました。
- ピコアンペアで細胞をリセット
実験では、赤血球に200〜700ピコアンペア(1兆分の1アンペア)という極微弱電流をたった4時間流すだけで、眠っていた核が動き出し、万能細胞のような状態へ戻り、
さらにその後、骨の材料になる細胞へと変化しました。
つまり電気が、細胞の“職業”を安全に切り替えるスイッチになったということです。
- 銀イオンがつくる無菌バリア
電極のプラス側に銀を使うと、弱い電流でもAg⁺(銀イオン)がゆっくり放出され、細菌のDNAを止めてしまいます。
人の細胞にはほとんど毒性がないため、傷口だけを“無菌ルーム”に変えつつ、マイナス側では再生を進める——これが「Minus for Growth / Plus for Infection」の要点です。
要するに、体がもともと使っている電気信号を少しだけ手助けし、細胞のモードを切り替え、銀で環境を守る——この3つがベッカー式マイクロカレント療法のエッセンスです。
代表事例
『The Body Electric』の中では、様々な事例が書かれています。
| 実験・症例 | 体の中で起きたこと | どれくらいでどうなったか |
|---|---|---|
| カエルの骨折モデル | ・骨折に弱いマイナス電気を当てると、 ・血の細胞(赤血球)が“万能細胞”に戻り、 ・やわらかい骨のもと→固い骨を作る細胞へ育った。 | 4週間後:折れた部分に柔らかい骨の土台ができ、 6週間後:レントゲンで完全な骨の橋が確認。 |
| シャーレ内の赤血球 | ・1兆分の1アンペアという超弱い電気を4時間だけ流すと、 ・赤血球が核を取り戻し“万能細胞”のように増えはじめた。 | 半日で細胞が2倍にふくらみ、 3日後にはコラーゲンを作り出す“骨の前ぶれ”細胞に変身。 |
| 通常では治らない大腿骨折+感染(患者ジム) | ①まず+側の銀線で菌を一掃。 ②つぎに-側の銀線(5〜10µA)を骨のすき間に入れると、 ・骨を作る細胞が集まり、固い骨が伸びはじめた。 | 6週間:ギプスで体重をかけて歩ける。 3ヶ月:感染ゼロ、骨は完全に元どおり。 1年後:再発なし。 |
| 放射線で壊れた首の傷(患者トム) | ・銀ガーゼにごく弱い+電気を流すだけで菌が消え、 ・“ピンクの新しい肉”が絨毯のように広がった。 | 2週間:骨が見えていた底まで肉が覆う。 1ヶ月:ばい菌ゼロで電気終了。 3ヶ月:植皮なしで傷口がふさがる。 |
| 皮膚の支え細胞(マウス培養) | ・銀+電極(10µA)のまわりで、 ・細胞がいったん丸くなり“万能細胞”に戻る。 ・電気を止めると、また元の働きに戻れた。 | 細胞がほとんど死なずに大量リセットされる。 同条件をブタの皮ふの傷に応用すると、治りが50%速くなった。 |
ベッカーの治療ステップ
ベッカーの治療ステップもいたってシンプルです。
- 電極をセット
骨折や欠損部の中心に負極(‐)、周囲の皮膚側に正極(+)を配置。 - “自然レベル+α”の電流を流す
骨なら 5〜10 µA、軟部組織なら数百 nA 程度が目安。 - 負極側:再生モード
細胞膜電位が変わり、眠っていた遺伝子がON。
例:赤血球が胚様細胞へ戻り、軟骨→骨へ変身。 - 正極側:クリーンモード
銀イオンが周囲1 cmの細菌DNAを破壊し、炎症を鎮める。 - 電極を外す
骨なら6〜8週間、皮膚なら1〜3週間で十分な組織が再生。
終わりに
“電気の医者” ロバート O. ベッカーは、弱い直流が細胞を目覚めさせ、骨や皮膚を「作り直す」ことを実験と臨床で示しました。
日本では彼の著作として「電磁波が人体に及ぼす危険性」について書かれている『クロス・カレント 電磁波“複合”被曝の恐怖』だけが出版されていますが、
本稿で紹介した 『The Body Electric』 こそ彼の集大成です。
ご興味を持たれた方は、ぜひ原著を手に取ってみてください。
クロス・カレント 電磁波“複合”被曝の恐怖
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The Body Electric: Electromagnetism And The Foundation Of Life
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